奥が深い採血
がん治療(その他多くの病気も同様だが)にもれなくついてくる血液検査。そのための採血をどれくらいしてきただろうか。考えてみると採血は医療におけるベーシックな行為でありながら、とても奥が深いなと最近思うようになった。健康体だった頃は採血なんて蚊に刺されるくらいの感覚でほとんど何の意味も持っていなかったが、がん治療を続ける中で血管がやせ細っていき採血が困難になっていくと、このベーシックな医療行為が極めて重要となりその在り方について真剣に考えざるを得なくなってきた。
まず、採血される側として心得ておかなければならないこととしては、とにかく血流を良くした状態で臨むこと。体が冷えていると上手く採血できないため、できるだけ厚着をして体を暖かく保っておくことが重要。冬季はカイロを有効利用する。軽くストレッチをすることも効果がある。そして、水分もたっぷり摂取しておくことも大切。針を刺した後は深く呼吸をすると血の流れもスムーズであるような気がする。
そしていよいよ採血に臨む。私は通常化学療法室の看護師に採血してもらう。最初に標準的な看護師が試み、運が良い時は一回で成功する。上手くいかない時は採血上手な看護師がヘルプとして呼ばれ、ここで成功することも多い。それでもダメな時は採血のエキスパート的な看護師が呼ばれ、ここで確実に成功する。エキスパート招へいパターンになる時は内心、最初からあなたが来て下さいよ・・・と思わずにいられない。なにせ左腕しか使えないので、失敗するたびに気持ちが重くなってしまうのである。
いつもそんな真剣勝負であるから、看護師が採血をしようとする時に成功するか否か大体予測できるようになった。血管を探す手つき、アルコール消毒や注射針を準備するテンポ、針を刺す角度、表情、声かけなどから総合的に判断して、「これは失敗するな」とか「今回は一回でいけそうだ」と推測し、これがほぼ当たる。当たったからといって何の役にも立たないが・・・。看護師が発する言葉は特に重要で、「ピッコロ母さんは血管が細いですからね~」とか、「う~ん、これは難しいなぁ」と看護師が言うとまず間違いなく失敗する。ネガティブな言葉はやはりそれなりの結果を伴う。採血が上手い看護師は血管の見極めも早く、作業自体も素早い。そして余計な言葉を発することがない。
採血は通常ホームとも言うべき化学療法室の看護師にやってもらっているのだが、早めに病院に到着した時は同じフロアの採血ルームで採血してもらって良いことになっている。採血ルームのスタッフはそれこそ採血専門なので、当然技術力が高く失敗することはまずない。たまに採血ルームで処置してもらえることがあり、そんな時は化学療法室で看護師に喜ばれる。「採血やってもらったんですか、良かったですねぇ、あの人達はプロですからね~」などと笑顔で言われる。いやいやあなた方もプロじゃないですかと突っ込みたくなるが、いつも採血の度に苦労させてしまう身としては申し訳なさが上回る。
ちなみに採血時の痛みは未だに慣れないし、注射針が刺さっている所は見ないようにしている。採血が終わると看護師も私も一仕事終わったような気にさえなる。採血は奥が深い。
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